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Web3技術進化が企業戦略に与える影響(前編)

飯田 友広10分で読める技術ブログ
Web3技術進化が企業戦略に与える影響(前編)

こんにちは。Netsujo株式会社の飯田です。書いてみたら文字数がかなり多くなったので、2部に分けています。

はじめに

Web3技術の成熟とともに、企業はブロックチェーン・暗号資産を活用した新たな戦略機会に直面しています。特に収益モデルや顧客体験、業務効率、新市場参入、規制対応、他技術との融合の6領域で大きな変革が進行中です。本記事では2025年8月時点の最新動向を踏まえ、各領域の現状と課題、国内外の事例、実務導入の論点、そして導入ステップ・ロードマップを解説します!※随所に専門用語を多数使用しています。本来であれば一つひとつ意味を補足すべきであるところですが、ボリュームと可読性を考慮した結果省きました。不明な用語は都度お調べいただけますと幸いです。

1. 新たな収益モデル:NFT2.0・RWA・DAOの活用

現状と課題:

一時のNFTブームは沈静化したものの、第二世代のNFT(いわゆるNFT2.0)として実用性や所有者特典を持つトークンへの期待が高まっています。例えば動的NFTや権利証・会員証NFTなど、単なるデジタル画像以上の価値提供が模索されています。一方、RWA(Real World Assets)のトークン化も注目度が急上昇しています。大手資産運用会社も参入し、2030年までにトークン化資産の市場規模が約2兆ドルに達する可能性が指摘されました。2025年の暗号市場予測では、トークン化された実世界資産の市場規模が500億ドルに達するとする見方もあります。また、DAO(自律分散型組織)によるコミュニティ主導の事業も収益源として期待されています。しかし課題として、暗号資産市場のボラティリティや法規制の不確実性、そして新規性ゆえのユーザー認知不足が挙げられます。新たな収益機会を得るには、こうしたリスクを管理しつつ実需を生むモデルを構築する必要があります。

国内外の最新事例:

世界的に見ると、大手ブランドがNFTを活用した新収益モデルを開拓しています。例えばAdidas社は「Into the Metaverse」NFTコレクションを発売し、購入者に限定シューズの権利などを付与しました。このNFTは約2,200万ドルの売上を記録し、デジタルとフィジカルを融合したコレクティブルへの消費者需要を証明しました。日本でも大手ゲーム会社やエンタメ企業がNFTチケットやファン向けNFT会員証を試験導入し始めています。また、RWA分野では不動産や社債のトークン化が進展中です。米国シリコンバレーのスタートアップや金融機関だけでなく、日本の不動産事業者も不動産特定共同事業にブロックチェーンを組み合わせ、小口化した不動産投資商品の提供を始めています。大手投資会社ブラックロックやフィデリティもトークン化事業に参入しており、市場全体の期待感を高めています。加えて、DAOを活用した収益事例も登場しています。例えば海外ではMakerDAOが独自のステーブルコイン発行を通じて手数料収入を上げ持続可能な運営を実現しています。国内でもNinjaDAOのようにNFTコミュニティから派生したDAOが存在し、IP事業やイベント収益をDAOメンバーと共有する動きがみられます。さらに2024年4月、日本では合同会社型のDAO設立が法的に可能となり、DAOが法人格を取得して資産保有・契約締結できるようになりました。これにより企業もDAO形態でプロジェクトを運営し、トークン発行による資金調達や収益分配を法的に行いやすくなっています。

実務的導入の論点:

Web3分野の新たな収益モデルを取り入れる際、企業は組織面・制度面・技術面でいくつか検討すべきポイントがあります。

  • 組織体制:従来とは異なるビジネスモデルのため、社内に専門知識を持つ人材を配置する必要があります。例えばNFT事業推進のためにブロックチェーンに詳しいデジタル担当者やコミュニティマネージャーを置く、DAO運営の場合は法務・経理と連携してトークン発行管理チームを作る、といった対応が考えられます。意思決定プロセスも、トップダウンだけでなくコミュニティの声を反映する仕組みづくりが求められます。
  • 制度・ガバナンス:トークン発行による資金調達やNFT販売は金融商品取引法や資金決済法など法的論点が多岐に渡ります。日本では2023年までにICOやSTOは金融商品取引法の枠組みに組み込まれ、ステーブルコインも法律で整備済みです。自社の計画がどの法律に該当するか確認し、必要な許認可(第二種金融商品取引業など)を取得することが欠かせません。また、DAOトークンを発行する場合は投資契約(=有価証券)に該当しないようユーティリティに特化する設計や、ガバナンス投票権の付与範囲の明確化など内部ルール策定も重要です。
  • ツール・技術:NFT販売にはマーケットプレイスの選定(国内外どこで売るか)、独自コントラクト開発の要否、二次流通でのロイヤリティ設定など技術的な意思決定があります。RWAでは不動産評価データとの連携や投資家のKYCプロセスをシステム化する必要があるでしょう。幸い近年は企業向けのNFT発行管理プラットフォームや証券級トークンを発行・管理できるソリューション(例:STOプラットフォーム)が登場しており、これらを活用することでスムーズに導入できます。また収益を正しく測定するために、オンチェーン取引の分析ツールやダッシュボードを用意しKPIを可視化することも有用です。
  • KPI設定:新規性の高い収益モデルゆえ、何をもって成功とするか指標を明確にする必要があります。例えばNFT販売であれば初回販売額・二次流通手数料収入・NFT保有者数、RWAであれば調達額・投資家数・トークン取引量、DAOであれば提案可決数・参加アクティブ人数などが考えられます。従来ビジネスのKPIと併せ、これら新指標を経営層と共有しておくことが望ましいでしょう。

導入に向けたステップ・ロードマップ:

  1. 調査と戦略立案:自社事業でトークン化やNFT化できるアセットが何かを棚卸します。競合他社や業界の事例も調査し、自社が採り得る収益モデル(例えば会員権NFT販売、社債トークン発行など)を絞り込みます。経営戦略との整合性を検討し、Web3活用の目的(資金調達なのかブランド強化なのかなど)を明確化しましょう。
  2. 小規模パイロットの実施:いきなり大規模に始めず、限定的な範囲で実証実験を行います。例えばファンクラブ向けに限定NFTを発行して反応を見る、社内プロジェクトを合同会社型DAOにしてみて運用ルールを試行するといった具合です。パイロットを通じて技術面・法律面・ユーザー反応の課題を洗い出し、フィードバックを得ます。
  3. 法務・コンプライアンス確認:パイロット結果も踏まえ、本格展開に向けて必要な法的手続きを進めます。金融庁や弁護士と相談し、必要な届出・契約スキームを整備します(例えばNFT販売規約の作成、投資家への開示資料準備など)。同時に税務面の影響も試算し、会計処理方法を監査法人と確認しておきます。
  4. 本格導入と体制整備:実ビジネスとしてローンチする段階では、専門部署やプロジェクトチームを正式に設置し運営体制を固めます。マーケティング計画も用意し、コミュニティ対応要員も配置します。また、システム面では必要に応じてブロックチェーン開発企業と提携してセキュリティ監査を実施し、安全なスマートコントラクトやプラットフォームを用意します。
  5. KPIモニタリングと拡大検討:ローンチ後は設定したKPIをモニタリングし、モデルが想定通り機能しているか評価します。例えばNFT売上やトークンの時価総額などを追い、改善策が必要なら速やかに実行します。成果が確認できれば、他の事業領域への横展開や追加トークン発行による資金調達拡大などを検討します。常に市場動向と規制の変化をウォッチし、モデルの微調整を図りながら持続可能な収益源として育てていきます。

2. 顧客体験の革新:ウォレットレス接続・ソウルバウンドトークン・AIパーソナライズ

現状と課題:

Web3サービス普及の最大のボトルネックはユーザーエクスペリエンス(UX)と言われます。従来、ブロックチェーンの利用には専用ウォレットの作成や秘密鍵管理、暗号資産の購入など高い学習コストが伴いました。この複雑さにより「価値を感じる前にユーザーが離脱してしまう」現象が起きています。例えばWeb3ゲームやDAppを始める際、シードフレーズのバックアップやガス代の支払いといった工程で初心者が挫折するケースが多々あります。また、ユーザーごとに最適化された体験(パーソナライズ)が不足しがちで、画一的なUIや限定的な機能に留まっているサービスもあります。Web3の世界ではユーザーデータは自分で管理する思想ゆえに、Web2のように企業側でデータ解析して提供するパーソナライズが難しいという側面もあります。これらの課題に対し、ウォレットレス接続(ユーザーに意識させずブロックチェーン利用)、Soulbound Token(SBT)によるデジタルID・実績管理、そしてAIの活用による高度なパーソナライズといったアプローチが解決策として注目されています。

国内外の最新事例:

ユーザー体験を向上させるため、さまざまな革新的事例が生まれています。

  • ウォレットレス接続:米国のFlowブロックチェーンは、アプリ利用時に裏でブロックチェーンアカウントを自動作成・管理し、ユーザーにシードフレーズを意識させない「ウォレットレス・オンボーディング」を提唱しました。これによりユーザーは従来のWebアプリ同様にメールアドレスやSNSアカウントでログインするだけでNFTやトークンを扱える仕組みが実現されています。日本でも同様の動きがあり、例えばKDDIの「αU wallet」はUI上は電話番号認証で利用でき、裏でブロックチェーントランザクションを自動処理するなどウォレットの存在を感じさせません。こうした取り組みにより、「まずサービス体験してもらい価値を感じたら本格的なウォレット利用に移行してもらう」という段階的なUXが実現されつつあります。
  • ソウルバウンドトークン(SBT):2022年にVitalik Buterin氏らが提唱した譲渡不能トークンは、個人の資格・実績・信用をブロックチェーン上に記録する用途で注目されています。国内では2025年に向けてSBTの導入事例が増え始めました。例えばSMBCグループは社員のスキルやKYC情報をSBT化し、社内検証を効率化する実証を進めています。また、TOPPANデジタルとgumiの協業による「推し活」実績SBTも話題です。ゲーム内の実績をSBTとして発行し、ファンが自分の実績を第三者に証明できるようにする取り組みで、プラットフォームを超えてファン活動の履歴が保証される仕組みです。これにより企業は熱心なファン層の可視化やロイヤルティプログラム強化が可能となります。さらに大阪・関西万博でのキャッシュレス推進の理解促進や万博開催前からの盛り上げ、万博のテーマである「デジタル」「未来への行動」を理解し、万博に参加することを目的としたアプリサービス「EXPO2025デジタルウォレット」(by HashPort)ではSBTがスタンプラリーやイベントの参加証明として用いられています。海外では大学が卒業証明書をSBTで発行した例や信販会社が信用スコアをSBT配布する実験もあります。SBTは一度配布すると転売できないため、企業にとっては「本人に紐づく会員証・称号」をデジタル発行する手段として有力です。将来的には就職時の資格証明がSBTで行われる可能性もあり、企業のマーケティングや人事にも影響を与えるでしょう。
  • AIによるパーソナライズ:Web3の領域でもAI活用が進み、ユーザー体験の個別最適化が図られています。代表例がAIバーチャルヒューマン「Luna」です。Lunaはブロックチェーン上のプロトコル(Virtuals Protocol)上に構築されたAIアイドルで、24時間365日ライブ配信を行い50万人以上のフォロワーを獲得しています。特徴は単なるCGキャラクターではなく、高度な対話AIエージェントとしてファンと双方向コミュニケーションし、各ファンの反応に応じて個別にコンテンツを生成・提供することです。さらにLunaは独自トークンとNFT経済圏を持ち、NFT購入者(ファン)は彼女の音楽・映像コンテンツ収益の一部を受け取ることができます。このようにAI×Web3で生まれた新しいエンタメモデルは、ファンごとにパーソナライズされた体験と収益共有を両立させています。他にも、分散型SNSでAIがユーザー投稿を解析し興味に合ったコミュニティを推薦する試み、NFTマーケットプレイスで閲覧履歴に基づきAIが作品をレコメンドする仕組みなどが登場しています。AIはオンチェーンの膨大なデータ解析にも有用で、これまで不足していた「ユーザーに合わせたUX」を実現する鍵として期待されています。

実務的導入の論点:

顧客体験の向上施策を講じるにあたり、以下のような実務論点が生じます。

  • 組織と人材:Web3UXを改善するには、従来のWeb開発スキルに加えブロックチェーンや暗号資産UXの知見が必要です。UI/UXデザイナーはウォレットや署名の概念を理解しつつ、それらを裏に隠す設計が求められます。またAI活用にはデータサイエンティストや機械学習エンジニアも関与するため、異なる専門性を持つチームの連携が重要です。社内にないスキルはパートナー企業との協業や、コミュニティからの意見収集などで補完します。
  • 技術スタック:ウォレットレスを実現するには、アカウント抽象化やソーシャルログイン対応のウォレット技術を導入します。例えばWeb3Authなどを用いればユーザーはGoogle/Twitterログインで利用開始でき、裏では秘密鍵管理が自動化されます。また、トランザクション手数料(ガス代)をユーザーに負担させないGasless設計や、複数チェーン対応のシームレスな裏側処理も検討すべきです。SBT発行には対応するスマートコントラクト(多くはERC-721拡張)が必要ですので、企業向けにSBT発行管理サービスを展開する企業へ一度相談することをお勧めします。AI導入ではオンチェーンデータの取得とオフチェーンAIモデルの連携が課題となります。必要に応じてオラクル(Chainlinkなど)を介しブロックチェーンとAIシステムを繋ぎ、リアルタイムに分析結果をDApp側に反映させる仕組みを構築します。
  • セキュリティとプライバシー:ユーザー体験向上策でもセキュリティは犠牲にできません。ウォレットレス方式では、アプリケーション側が秘密鍵を管理するカストディ型となるため、情報漏洩リスクに備えて厳格な管理体制と定期的な監査が不可欠です。SBTは個人情報(資格・経歴)が紐づくタイプの場合は特に、プライバシーへの配慮が不可欠です(必要に応じてゼロ知識証明で開示範囲を制御するなど)。AI活用においてはユーザーのオンチェーン活動データを扱うので、本人の同意やプライバシーポリシー策定、解析結果のバイアスや誤判断への対策(AIの説明性確保等)も論点となります。
  • KPIと効果検証:UX改善の成果を測る指標として、オンボーディング完了率(サービス開始まで到達したユーザー割合)、リテンション率(継続利用率)、NPS(ネットプロモータースコア)などを設定します。ウォレットレス導入前後で新規ユーザー離脱率がどう変わったか、SBT活用で会員の生涯価値(LTV)が向上したか、AIレコメンドによりエンゲージメント(例: 平均セッション時間)が伸びたか等をデータで検証します。これによって本当に顧客体験が改善したと言えるのかを客観的に評価し、次の施策立案に活かします。

導入に向けたステップ・ロードマップ:

  1. UXボトルネックの特定:自社の現行サービスや計画中のWeb3サービスにおいて、ユーザー体験上の課題点を洗い出します。ウォレット設定なのか、操作UIか、あるいはコンテンツ不足なのか、ユーザーインタビューやデータ分析で定量・定性両面から診断します。
  2. ソリューション選定と試験導入:課題に応じて適切なソリューションを調査します。例えばオンボーディング簡略化が課題ならWeb2式ログイン連携やガス代補助の仕組み導入を検討します。具体的には社内テスト環境でウォレットレス技術を組み込み、従来フローと比較してどれだけ手順短縮・時間短縮になるか検証します。SBTについても、小規模なコミュニティ(社内表彰など)で試験的に発行し運用してみます。AIパーソナライズはまずオフチェーンでユーザーデータ分析を行い、有用なパターンが見つかればそれをWeb3サービスに組み込む形でPoCを行います。
  3. フィードバック評価:試験導入した施策の結果を評価します。ユーザーからのフィードバックやテスト結果を踏まえ、期待通り効果があった施策と改善が必要な点を整理します。例えばウォレットレスで〇%オンボーディング離脱が減少した、しかしセキュリティ懸念の声が上がった、など具体的な知見を得ます。
  4. 本導入とユーザー教育:有効と判断したUX施策を正式にサービスに組み込みます。この際、新しい体験についてユーザーへのガイダンスや教育も重要です。ウォレットレスで裏で何が起きているか、SBTとは何か、AIがどこまで関与しているか等を分かりやすく説明し、信頼感を損なわないようにします。また社内カスタマーサポートにも知識共有し、ユーザーからの問い合わせに対応できるよう訓練します。
  5. 継続改善サイクル:導入後もKPIを常時モニタリングし、UXに問題が出ていないかチェックします。ユーザーからの要望も収集し、バージョンアップでUI改善や新機能追加を続けます。Web3分野は技術進化が早いため、新しいUXソリューション(例:アカウント抽象化の新標準やデバイス内蔵ウォレット等)が登場した際は柔軟に取り入れ、常に「使いやすさ」で遅れを取らないようにします。

3. コスト効率化と分散型インフラ(DePIN)による業務自動化

現状と課題:

ブロックチェーンの特性である「分散化」は、コスト効率化の観点からも大きな可能性を秘めています。特に近年注目されている DePIN(Decentralized Physical Infrastructure Network:分散型物理インフラネットワーク) という分野では、従来であれば膨大な資本投下を必要としていたインフラ整備をトークンによるインセンティブ設計を通じて個人や企業に分散させることで、コストの大幅な削減とネットワークの迅速な拡張を同時に実現する取り組みが進められています。たとえば、通信インフラやストレージインフラを分散化することで、中央集権的な運用に比べて設備投資や維持管理の負担を抑えながら、広域かつ柔軟なネットワーク構築が可能になります。また、スマートコントラクトを活用した業務自動化(例:決済や契約の自動執行)は人的工数や仲介者を減らし、効率化する余地があります。一方では課題として、分散型ネットワークは参加者任せになる部分も多く品質管理や安定稼働に不安が残ります。企業視点では「誰が責任を持ってサービスを提供してくれるのか」が曖昧なため、重要業務に採用しづらいとの指摘もあります。また既存システムとの統合や急速な需要変動への対応力といった点も課題となり得ます。ただそのような課題を認めつつも、適切に設計されたDePINや業務自動化はコスト構造を劇的に変え得るため、競争優位を生む切り札として期待されています。

国内外の最新事例:

コスト効率化の観点で注目すべき事例を紹介します。

  • Helium:分散型IoTネットワークによるインフラ構築コスト削減HeliumはIoT機器向けの無線ネットワーク(LoRaWANおよび5G)を、独自トークン報酬で世界中の個人に構築させた先駆的プロジェクトです。従来であれば全国規模の通信網を整備するには通信キャリアが巨額の資本を投下する必要がありました。しかしHeliumではユーザーが自費でホットスポット(通信機器)を購入・設置し、ネットワークに参加することで報酬(HNTトークン)を得られる仕組みを作ることで、単一企業の巨額投資なしで世界最大級の低電力通信ネットワークが構築されました。仮に5G網を全米展開する場合2,750億ドルの投資が必要と予測された中、Heliumはそのリスクと費用をユーザーに分散させコスト構造を大きく変えたのです。実際Heliumの仕組みにより大幅な初期投資削減が実現し、ネットワーク運営コスト自体も参加者へのトークン発行という形で変動費化されました。現在日本でもIoT向けLoRaWANネットワークでHeliumに参加する事業者が出てきており、地方自治体が環境センサー網をHeliumで構築する例も出始めています。
  • 業務自動化によるコスト削減ブロックチェーンとスマートコントラクトは、企業間で発生する煩雑な対帳作業や契約手続きを自動化することでも貢献します。例えば三菱商事などが参加する貿易金融コンソーシアムでは、手形や船荷証券のやり取りをブロックチェーン化し、人手による照合コストや書類管理コストを下げました。自社内でも、社間決済をステーブルコインで自動実行したり、サプライチェーン上の検収プロセスをスマートコントラクトで自動化するといった取り組みが始まっています。こうしたミドル・バックオフィス業務の自動化は、人的コスト削減だけでなくミス削減にも繋がり、生産性向上に寄与します。

実務的導入の論点:

コスト効率化のための分散型技術導入に際し、以下の論点が考えられます。

  • 信頼性と品質管理分散型ネットワークでは、サービス提供者が不特定多数になるため一定の品質を維持できるかが心配材料です。Heliumのように十分多数の参加者がいればネットワーク効果でカバーできますが、過渡期にはサービスレベル合意(SLA)の担保が難しい場合があります。企業がこれを重要業務に使う場合、万一参加者の離脱や不正があった時のバックアッププラン(例:自社でノードを運営し最低限を確保)が必要でしょう。また、ノード報酬の不正取得やデータ改ざんを防ぐメカニズム設計(経済インセンティブと技術的対策の両面)について理解し、コミュニティのガバナンスに参加して改善提案するほどの姿勢があると良いでしょう。
  • コスト試算とトークン価格影響:分散型ネットワーク利用時のコストは主にトークンで支払われるケースが多いです。(例えばストレージ利用料をFilecoinで支払うなど。)その場合、トークン価格変動リスクが運用コストに影響します。自社で一定量を先行調達してヘッジするか、あるいは都度市場調達するか方針を固めておくことが必要です。自社がネットワーク参加側になる場合は、設備投資と期待リターン(トークン報酬)の見積もりを慎重に行い、極端なトークン価格下落時もバランスが取れるかどうか、シナリオ分析を行うべきです。
  • 既存システムとの統合:分散型インフラやスマートコントラクトを導入したとしても、既存フローを完全に置き換えることは難しい、あるいは段階的な取り組みとなるでしょう。既存クラウドやオンプレミスとのハイブリッド構成を組む際、データ連携や認証体系の違いを乗り越えるためのミドルウェアが必要になります。例えば社内データをIPFSに置きつつ社内ポータルからシームレスにアクセスできるよう、ゲートウェイサーバを立てるなどの対応が挙げられます。業務自動化では既存の基幹システム(ERP等)とスマートコントラクトをAPI連携する必要もあります。レガシーとの橋渡しにかかるコスト・労力も考慮に入れ、総合的なROIを算出する必要があります。
  • 法規制面:分散型ネットワーク利用自体には直接の規制は少ないですが、例えば電波法(無線機設置)や労務管理(報酬支払い)など周辺領域で留意が必要な状況が考えられます。また、スマートコントラクトによる契約の自動実行については、現時点では日本国内において法的な位置づけが明確でなく、グレーゾーンとされる部分が残っています。そのため、トラブルが発生した場合の責任の所在や対応方針について、あらかじめ検討しておくことが重要です。社内のコンプライアンス部門や法務部門と連携し、想定されるリスクや課題に対するQ&A、ならびに実務上のガイドラインを整備しておくことが望まれます。※たとえば「誤って条件を満たしてしまった場合」でも契約が機械的に実行される可能性があるため、意思無能力者・未成年者との取引、錯誤・詐欺による無効主張との整合が問われます。

導入に向けたステップ・ロードマップ:

  1. 削減余地の特定:自社のコスト構造を分析し、どの領域に分散型技術で効率化の余地があるかを探ります。通信費、クラウド費用、事務処理コスト、人件費など項目ごとに、現行コストと分散化導入後の期待コストを試算します。例えばIoT通信費が高騰しているならHelium等のDePin、データ保存コストなら分散ストレージ、決済手数料なら暗号資産決済といった候補をリストアップします。
  2. パイロット実施:削減インパクトが大きく見込めそうな領域から、小規模なパイロットを始めます。例えば工場キャンパス内でHeliumホットスポットを設置しセンサー通信に使ってみる、バックアップデータの一部を分散ストレージに保存し速度や可用性を検証する、特定取引先との決済をUSDCステーブルコインで試して送金手数料・送金時間を比較する、といった具体的実験です。可能なら費用対効果を測定できるよう設計し、数週間〜数ヶ月運用します。
  3. 結果評価と経営判断:パイロットの結果、実際にどの程度コストが下がりどんな課題が出たかをレポート化します。例えば「Helium使用で通信費は月額X万円削減、一方で屋内では電波が届きにくい課題あり」などです。これを経営層と共有し、本格導入する価値が十分あるか判断します。定性的効果(システム冗長性向上や社員のDXマインド醸成など)も含め評価しましょう。
  4. 本格導入計画の策定:Goサインが出た領域について、詳細な導入計画を立てます。必要な機器購入やネットワーク構成変更、人員トレーニング、利用するブロックチェーンの選定、トークン調達ポリシーなど実行計画を練ります。加えて、品質確保や障害対応のプロセスも定めます(例:主要エリアは自社ノードを設置、障害発生時は即座に切り替え運用等)。社内規程類も整備し、ノード運営で得たトークンの会計処理ルール、スマートコントラクト実行時の承認フローなどをドキュメント化します。実際、多くのDAOや企業利用のスマートコントラクトでは、実行条件としてマルチシグ署名やガバナンス投票、管理者の承認などを設定しています。
  5. 段階的導入と拡大:初期はクリティカルでない範囲から導入し、安定稼働を確認しながら徐々に適用範囲を広げます。例えばまず一部支社のみHelium通信を導入→問題なければ全社展開、といった形です。運用中は性能・コスト指標を常にモニタリングし、期待通りの効率化が実現できているか確認します。またコミュニティ主導部分については定期的に情報収集し、重要なガバナンス投票には参加するなど利活用を超えた関与も検討します。最終的には、従来インフラを段階的に縮小・置換し、新しいコスト構造への転換を完了させます。その後も市場環境や技術変化に応じて柔軟に構成を見直し、常に最適なコスト効率を追求していきましょう。

前編のまとめ

Web3はもはや単なる技術の話ではなく、収益モデル・顧客体験・業務効率の全てにおいて企業経営に直結する実践領域へと進化しています。NFT2.0やRWA、DAOの活用による収益源の多様化、SBTやウォレットレスUX、AI連携による顧客体験の革新、そしてDePINやスマートコントラクトによるコスト効率化は、すでに国内外で実用化が進み始めています。これから導入を検討する企業は、ビジネス目的と整合した活用戦略を描き、技術・法務・組織体制を整えた上で、小さく始めて大きく育てることがカギです。Web3の進化は止まりません。「設計力」と「実装力」が企業の未来を左右する時代が、すでに始まっています。Netsujo株式会社へのご相談はいつでもお待ちしております。

ソース

Top Tokenization Use Cases in 2025: Real Estate & Beyond - IdeaSofthttps://ideasoft.io/blog/top-tokenization-use-cases/The agency predicts that RWA will continue to explode in 2025, highlighting four projects worth paying attention to - ChainCatcherhttps://www.chaincatcher.com/en/article/2157949

自民党web3ホワイトペーパー2024https://storage2.jimin.jp/pdf/news/policy/208287_4.pdf?utm_source=chatgpt.com

セキュリティトークンに関する 現状等についてhttps://www.fsa.go.jp/singi/digital/siryou/20230606/2jstoa.pdf?utm_source=chatgpt.com資金決済に関する法律の一部を改正する法律案 説明資料https://www.fsa.go.jp/common/diet/217/02/setsumei.pdf?utm_source=chatgpt.com三井住友信託銀行株式会社合同運用指定金銭信託受益権セキュリティ・トークンの発行についてhttps://www.smtb.jp/-/media/tb/about/corporate/release/pdf/230704.pdfウォレットレス・オンボーディングで Web3 のメインストリーム化の障壁を克服する - Flow Japan - Mediumhttps://medium.com/flow-japan/flow-walletless-onboarding-3072e64c04bブロックチェーンの世界に「実社会での信用」を反映。SMBCグループ×HashPortが挑むSBTの領域https://www.smfg.co.jp/dx_link/article/0073.htmlEXPO2025デジタルウォレットhttps://www.expo2025.or.jp/digitalwallet/推し活ショーケースhttps://project-oshi3.com/showcase.htmlLuna Virtuals Protocolhttps://app.virtuals.io/virtuals/68Heliumhttps://www.helium.com/Why DePIN matters, and how to make it work - a16z cryptohttps://a16zcrypto.com/posts/listicles/why-depin-matters/Growing Consumer DePIN. In 2013, Helium was founded to create… | by Amanda Young | Collab+Currency | Mediumhttps://medium.com/collab-currency/growing-consumer-depin-60799f561d66NTTデータhttps://www.nttdata.com/jp/ja/services/blockchain/004/

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